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田口 光正
放射線化学, (77), p.2 - 7, 2004/05
近年、高エネルギー重イオンの利用は原子核物理研究に留まらず、材料開発や生物学,医療などさまざまな分野へと拡大している。これら応用研究の基礎として、単一イオンについて、高エネルギー重イオンと物質との相互作用における物理過程(線量分布),物理化学過程(初期活性種の挙動)及び化学過程(ラジカルによる反応収率)について明らかにすることは非常に重要である。本論文では、水中での重イオン誘起化学反応について、これまでに行われてきた研究成果を、線量分布,平均反応収率,微分反応収率及び初期活性種挙動の4つテーマに分けて、それぞれ現状や動向,今後の研究課題等について展望を述べる。
田口 光正; 小嶋 拓治
JAERI-Review 2003-033, TIARA Annual Report 2002, p.141 - 142, 2003/11
酸素飽和フェノール水溶液への重イオン照射の結果、OHラジカルが付加置換反応した3種類の構造異性体を持つ生成物(ハイドロキノン,レソルシノール及びカテコール)がd同定された。これらの生成収率は入射エネルギーに対して一次以上の増加率であった。この生成収量を、水中で進行方向に連続的に減弱するイオンエネルギーの関数として微分解析して得られた各生成物の収率(微分G値)は、線照射により得られるG値の1/2から1/10の範囲であった。線照射の場合では、これら生成物の総G値は、OHラジカルの生成G値の90%以上であることから、イオン照射では高密度に生成したラジカルの再結合反応が酸化反応よりも速く起こるため微分G値が小さくなると考えられる。また、C及びNeイオンともにOHラジカルの微分G値は比エネルギーが減少するに伴い小さくなることがわかった。さらに、同一比エネルギーでは、微分G値はCイオンの方が大きかった。このように微分G値は核種と比エネルギーに依存することがわかった。なお、Cイオンに関しては、LaVerneが低エネルギーCイオンで求めたG値とよく整合した。